長崎地方裁判所 昭和44年(ワ)334号 判決
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〔判決理由〕前掲各証拠並びに乙第一号証上にはその作成日付として昭和四三年一月二八日の記載があるのに拘わらず(いわゆる危急時遺言の手続にしたがつて作成された=編集部)右遺言書の作成が完結したのは翌二九日であつたことが認められ、日付の記載に誤りがあつたとしなければならない。
蓋し法定方式主義を採用する民法の下にあつて遺言の方式は厳格性を要求され、その理由根拠は遺言者の真意の確保と後日の疑問、紛争の防止にあることは云う迄もなく、而して危急時遺言においては口授、筆記、読み聞かせ、証人の署名捺印という一連の手続を経てのち作成手続が完了しここに始めて遺言は作成されるもので(民法九七六条一項)、署名、捺印と加除訂正手続が未だ終了しない一月二八日をその作成日時とした本件遺言書は不真実の日付を記載した瑕疵があるといわねばならない。
而して内容の矛盾牴触する遺言書が二通以上存在する場合には後の遺言により前の遺言は変更せられる法の趣旨(民法一〇二三条)に照らし且日付を欠く遺言は無効であるとの一貫した判例態度を併せれば本件遺言はこの点において全体が無効になると解するのが相当である。(山下進)